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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第25章 episode.25


もう結構歩いたんじゃないかな。


道無き道のせいもあって、体力の消耗が激しい。


大きな段差があるたびに、レイジさんはこちらを気遣ってくれた。


「ふぅ……今、どの辺なんですかね…?
目印とかがないから、分からないですね」


「ええ…。
しかし…、ちょっと待ちなさい」


「え…?」


ザッ、と足元の土が音を立て、歩みを止めると周辺は静かになった。


「ま、まさか…」


何か居るとか…?


言い掛けたところで、レイジさんは口元に人差し指を当てた。


「しっ…。
静かに」


目を閉じて、何かを聞こうとして居るみたい。


私は黙って見守る事にした。


「やはり、あちらの方向から僅かに水の音がします。
おそらくこの雑木林を超えた先に川がある。
行きましょう」


これまで歩いてきたより少し右手側の方向に見えているのは、うっそうとした雑木林。


木が生い茂っていて随分と暗そうだ。


つい、逆巻家から出てひとり町を抜け出した時の事を思い出してしまった。


あの時も森を抜けたけれど、あの森とは全然違う。


周囲も決して明るくはないせいか木が生えている先は闇深く見える。


大丈夫なのかな…。


「私は夜目が利きますが、貴女はそうではないでしょう?
決して離れないように」


「はい」


ぎゅ、と手を握り返した。


大丈夫。


この手を離さなければ絶対大丈夫。


力強い腕に導かれるように、雑木林へと足を踏み入れた。
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