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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第25章 episode.25


カチャカチャ…とお皿の音が響く。


頂いたスープは赤いトマトスープで、具沢山でとても美味しくお腹も充分満たされた。
つい、おかわりして食べちゃった。


七分ほどまでまくりあげたシャツの裾から伸びる綺麗な手が、滑らかにお皿を動かしている。


そのお皿の上を水が流れて行くのを見つめながらふと思い出していた。


さっき、洗面台でも一緒に居なきゃいけなかったのは…ちょっと恥ずかしかったな…。


レイジさん鏡越しに見てるんだもん。


ちら、と斜め上を盗み見た。


やっぱり、繋がれてると思うと全く落ち着けないよ…。


でも、それはお互い様だもんね…。


洗い終えたお皿を受け取り、ふきんで拭いていった。



「さて…と。
では、そろそろ行きましょうか。
貴女、バッグにこれを入れておいて頂けますか?」


手渡されたのは、昨日ここで確認した地図。
私はバッグの内側のポケットに四角く畳まれたそれを仕舞った。


ギ…、と音を立ててレイジさんが扉を開けた。


「…お世話になりました」


誰も居ない部屋だけど、お礼を言ってから外へ出た。


あまり爽やかとは言えない空気だけど、昨日暗闇から聞こえた獣の声は今は聞こえて来なかった。


「ふむ……周辺は特にこれと言った気配は感じません。
行きましょう、まずは川へ出ますよ」


レイジさんは昨日してくれたように、手を繋いでくれた。


当然のようにそうしてくれた事が嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。


落ち着かなかったり不便な事も多いけど、最初のきっかけをくれたのも、この手首に絡まる蔦だ。


ちょっとだけ、感謝してもいいかな…?


今日もこの背中について行く。


私もまた、当然のようにそう思っていた。



まだ、この時はー。
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