die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第24章 episode.24
「……ん?
何です?
私には任せられないと?」
「いえ!
そんな訳ないです。
…えっと…あの……。
さっきの…き、聞こえましたよね?」
何の事を言っているのかは、彼女の顔を見れば歴然としていた。
「ええ、聞こえましたよ。
貴女の身体は大変正直なようですね」
「やっぱり…!
わ、忘れてください…っ!
あ、これ、も、持って行きますね…っ」
そんなに、慌てなくとも良いのに。
よほど恥ずかしかったのか、彼女は手にカトラリーを持つと慌てて私から見えないリビングへ行ってしまった。
「…フッ…、やれやれ…」
鍋に目線を落とすと、小さくふつふつと湧き始めている。
匂いにも見た目にも、おかしなところはないが、念のため少し口に運んでみた。
「…うん、大丈夫そうだ」
その時、窓をコツコツとつつく音がした。
「ひゃっ……な、何…?」
「おそらく、この気配はコウモリでしょう。
放っておいてかまいませんよ」
ちらりとリビングの様子を伺うと、彼女は窓のカーテンをおそるおそるめくろうとしているところだった。
私はキッチンに目線を戻し、白い皿にスープを盛り付けた。
二つ並んだ皿を目の前に、鍋に蓋をした時だった。
ゴトン、と鈍い音がした。
「何です?
蔦があるのですから、あまり動き回ると…」
言いながら先程まで彼女が居た窓際を見たが、姿がない。