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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第24章 episode.24


「誰かの家なんでしょうか…?
留守なのに、不用心すぎますよね…?」


部屋の中を見回しながら彼女が言った。


「おそらく、父上でしょう。
今夜はここで休むように、との事だと思いますよ。
それ以外考えられません」


「そ、それって……」


ーまるで、手のひらで踊らされているよう。


私は心の中でそう続けた。


「……フッ。
貴女、先程から震えているじゃないですか」


私は話題を変えた。


「怖いのですか?
……ふふ」


不安にかられている表情をした彼女の手は普段より冷たく、緊張している事を物語っていた。


蔦で繋がれていない方の腕で腰を抱き寄せると、私の胸で小さく息を吐いた。


「…はぁ…。
こ、怖かったです…」


髪に触れると、私に身体を預けて来たのが分かった。


「大きな声など上げて、淑女失格ですね」


「す、すみません」


今の彼女にとっては厳しい言葉をかけたと言うのに、それに構わず彼女も私の腰に手を回してきた。


温かい。


こうして貴女に触れていると、私の方が癒されていくようです。


彼女の鼓動が、少しずつ穏やかになってくるのを感じ取った。


繋いだ手は徐々に温かさを取り戻してゆく。


「落ち着きましたか?」


「は、はい…」


「では、少し付き合っていただきますよ」
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