die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第24章 episode.24
「すみません、どなたかいらっしゃいますか」
辿り着いた先の灯りは、ロッジのような建物の窓から漏れていた。
あまり立派とは言えないその扉を数回叩いてみるけれど、反応はない。
扉の向こうには、誰の気配も感じられない。
「……開けてみますか……」
「え……でも…、勝手にそんな」
「仕方ありません。
他に、安全そうな場所はないのですから…」
躊躇する彼女を説得しようと言いかけた時、私達の背後の茂みがガサガサッと音を立て、揺れた。
ごくわずかではあるが唸り声も聞こえる。
鼻を利かせた獣たちが、集まって来ているに違いない。
「!!っ…きゃあっ…!」
私の一歩下がった所に居た彼女が、大きな声をあげて私の腕にしがみついてきた。
「な、なんですか、大袈裟な…!
この先、このような獣の気配を多数感じます。
こんな中歩く訳にもいかないのですから、いいですね?
開けますよ」
「…は…はい…」
震える声のか細い返事とは反比例し、腕にしがみつく手には力が込められている。
「失礼します」
扉には鍵がかけられておらず、すんなりと開いた。
部屋には暖かみのある明かりがついていて、何やら良い匂いがしている。
危険な気配は感じられなかった。
「大丈夫です。
中に入って下さい」
彼女に中に入るよう促し、辺りを一蹴して扉の鍵を掛けた。