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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第23章 episode.23


「これは…!
…少し、お待ち下さい。
今外しますので。
手をこちらに」


「は、はい」


言われるままに腕を差し出すと、レイジさんがまずは私の手首に巻き付いた部分を解こうと手をかけた。


「…ぐっ…。
何ですかこれは…!
ビクともしないじゃないですか」


ギチギチと音を立て、全く解ける気配のないそれは、彼を苛立たせていた。


「あ…!
そうだ、これを使って切りましょう」


私は空いた方の手でポケットを探り、ナイフを取り出してみせた。


「なるほど、お願いします」


レイジさんが蔦の端を持ってくれたので、私はそのまま片手で結び目にナイフを当てた。


見た目にも明らかだけれど、実際にちょっと指に触れただけで切れてしまったのだ。
かなり鋭利なこの刃先。


それが、どれだけ力を込めても、刃先を行き来させても、切れる気配がない。


せめて表層だけでも切れても良さそうなものなのに。


「おかしいな…」


少し焦りを感じながら、刃先を動かしていたその時、脇芽から新しい蔦が急速に伸びてきた。


「えっ…?!」


驚いて声を上げた一瞬の間に、新たな蔦はぐんぐん伸びて更に手首に絡みついてしまった。


その様子を見て絶句してしまう。


「…まったく…。
魔界産の植物は、随分と厄介なものですね」


レイジさんの言葉に頷きながら、手首を見つめる。


「外すのは少々骨が折れそうです。
我々は先を急ぐ必要がありますので…」


そう言いながら、呆然と見つめていた私の手を取ると、蔦で繋がれたお互いの手は、手のひらを合わせて文字通り繋がれた。


「ほら、こうしていれば、気にならないでしょう」


「あ…」


確かにこれなら、蔦の事は気にならない。


だけど、私の頰は熱くなるのを止められなかった。
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