die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第23章 episode.23
頰に、かすかな感触を感じる。
「…ん…?」
ぼんやりとした視界に意識を向けると、次第に身体に感覚が戻って来る。
肌をくすぐる野草が揺れていた。
ここは、何処なのだろう。
起き上がろうと地面に手を突こうとすると、手首に何かが巻きついているのが目に入った。
植物の蔦のようなそれは、ぐるぐると私の手首に巻きついていた。
「何これ…?」
蔦の伸びた先を目線で辿ろうとすると、少し離れた所にレイジさんが居るのが目に入った。
「う…。
…ここは…?」
ちょうど、目を覚まし肘をついて起き上がろうとしているところだった。
「レイジさん……」
「貴女…無事ですか?」
「はい」
顔を見て少し安堵していると、何処からか声がした。
「この先、お前たちにはいくつかの試練があるだろう。
二人なら乗り越えられると信じている。
健闘を祈るよ」
「…父上…!?」
声はそれっきり聞こえなくなり、耳を澄ましても、通り抜けた風がザワザワと草木を揺らす音が聞こえるだけだった。
ここはとても、静かな場所だ。
「はぁ…」
沈黙を破るようにレイジさんは深くため息をついた。
「とりあえず、今は先に進むしかなさそうです。
立てますか?」
「はい。
大丈夫です…っと」
その場で立ち上がろうとすると、手首に巻き付いた蔦が持ち上げられて、その先が明らかになった。
レイジさんの手首にも同じように巻き付いた蔦が、お互いを繋いでいた。