die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第23章 episode.23
さくさくと足元の野草を踏みながら進む。
仕方のない事とはいえ、レイジさんと手を繋いでふたり歩いているこの状況に、私の心は浮ついたり、恥ずかしさに悶えたり行ったり来たりしていた。
先の見えない状況にも関わらず、身体が軽くなったような気さえしている。
きっと、浮かれてるんだ私…。
さっき、カールハインツさんが言っていた"試練"がどんなものなのか私は気になっていた。
ふと隣を見上げると、それに気づいたレイジさんと目が合った。
「…ん?
どうかしましたか?」
「あ、いえ、何でもありません」
「…まさか、もう歩き疲れただなんて言うのではないでしょうねぇ?」
「違います。
もう、レイジさん、私、町を出て隣の村まで徒歩で行ける事、知ってるじゃないですか。
結構歩けるんです、私」
半分からかうような言い方をするレイジさんに、説得力のある説明が出来たと胸を張っていると、ワントーン低めの静かなため息が頭上から聞こえた。
「……ふぅん。
随分と得意げですが…。
その話を、よく笑って出来ますねぇ…」
しまった…。
レイジさんの瞳がキラリと光ったように見えた。
「その節のお仕置きは、まだ全て終わってはいないのですが…」
「…っ!あ…!
あれは!
レイジさん、あの花は何て言う花ですか?
初めて見るなぁ〜…」
「っあ、こら、まだ話の途中ですよ。
…っ脇道に逸れないで下さい!」
この件が終わったらお仕置きされてしまうんだろうか。
脇道の花の名前を思い出そうとしている横顔を、そっと見つめながら、例えお仕置きされるのだとしても、無事この件が解決するようにと、心の中で強く願った。