die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第23章 episode.23
「こうして面と向かうのは暫く振りだな。
お前の使い魔が来た事は驚きだった」
「はい…。
こちらから出向くところを、恐れ入ります」
「いや、構わない。
私も時には城の様子をこの目で見ておきたかったのでな。
それに…」
彼はチラリと私に視線を向けて、ぎくりとする私を見て少し微笑んだように見えた。
「して、何か私に依頼ごとがあると?」
「その件ですが父上。
手短にお伝えしますが…。
現在、こちらと人間界を繋ぐ扉が閉ざされています。
おそらく何らかの呪術によるものと思われますが…」
「ふむ、そうだな…。
まぁ少々厄介な事ではあるが…。
しかし、お前が私にそんな相談事をしてくるとは意外だ」
「訳あって…今は時間が無いのです。
扉を…再び使用可能にしては頂けないでしょうか」
「…それが、望みなのか?」
「…はい。
このままにしておいても、いずれは使えないと困る事になるのではないでしょうか」
「…ふっ」
口元に笑みを浮かべると彼は立ち上がり、背を向けた。
「お前は相変わらずだな…。
本当の望みは、別にあるのではないか?」
「……」
レイジさんは黙ったまま、真意を探るかのように彼を見据えている。
私はそのやり取りを黙って見ている事しか出来ない。
「そう勘繰るでない。
では言い方を変えよう。
そちらのお嬢さんが、今のままでいられる方法を私が知っていると言ったら?」
「父上…!」
「…!」
それは…つまり、やっぱり私の事は把握しているって事?
ぎくりとしたけれど、レイジさんが何か言うまで私は平静を保っていなければ。