die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第22章 episode.22
「世界の理も変えることの出来る力をお持ちなのだから、そんな他愛のない事に手を煩わせる必要はないのです」
頭上から聞こえる声は少し笑みを含んでいるようで、それがその"力"と言うものがいかなるものかと言う事を、逆に感じさせた。
「さぁ、まだお仕置きはこれからですよ…」
「…きゃ!」
不意に耳元で囁かれ、反射的に身体を押し返そうとした。
「おや?
暴れるのはおやめなさい。
分かっていますか…?
貴女は先程から、随分と私を誘っているのです。
この…血の匂い…」
抗おうとする手を取られ、目で追った先で指先に口付けられた。
「しかも勝手に血を流したのですから、許す訳にはいきません…」
耳を甘噛みしながら首筋を指でなぞられ、身体が強張る。
「ひゃ…」
唇は首筋に滑り落とされ、探っているように優しく移動した。
途端に甘さが拡がって、力が抜けそうになる。
「…ゃあっ…」
必死にもがいて逃れようとするのだけれど、レイジさんはまるで小動物でもあやしているかのよう。
「ここがいいのですか?
ふふ、その表情…」
首筋にあてられた牙が、ぐっと押し込まれた。
痛く重く、そしてそう時間を掛けずじわりと幸せを感じる。
「う…ぅ…レイジさ…ん…」
腰に回された腕には力が込められ、ぐっと引き寄せられる。
さっきまでの私を軽くからかうような言葉と、落ち着いて見えた態度とは裏腹に、余裕が無い息遣いで牙を押し込めてくる。
そんな風に吸われると、どうしようもなく愛しくなってしまうよ…。