第22章 episode.22

目の前に跪き手に口を付ける姿は、いつものように美しく、目を奪われる。


でも、普段より強く血を求めているような舌使いは、私を大人しくなんてしていられなくさせる。


「あ、あの…レイジさん…。
私、手、洗ってきますから…」


「何を言っているのですか。
貴女の血は、すべて私のものなのです。
例え一滴であってもね…」


それからも尚、手に付いていた血をすべて舐め取ると、レイジさんは納得したように私の腕を解放した。


「傷は…これで様子を見ましょう」


やっと、終わった…と言う安心感と、もっと味わいたかったような残念な気持ちが混在している。


何を思ってるの、私は…。


その時、不意に頰に柔らかい感触を感じた。


「…真っ赤、…ですよ。ふふ」


唇が触れたんだ、驚いて声も出なかった。


レイジさんは立ち上がり、腕を組むとため息をついた。


「それにしても貴女は…。
無理をするなと言ったのに勝手な事を。
これは、お仕置きが必要です」


「すみません…。
で、でも…っ」


あの時しかチャンスが無いような気がしたのだ。


こんな結果になるなんて思いもしなかった。


言葉を紡ごうとした私のあごがくぃ、と上に向かせられ唇が塞がれた。


「ん…っ…」


言いかけた言葉はキスに飲まれ、発せられる事なく消えていく。


これ…お仕置き…なの？


すごく…優しくて…。


こんなの、何にも言えなくなっちゃう。


チュ、と音を立てて唇が離れた。


「口答えは、許しません。
さて、どうしましょうかね…ふふ」


あごに指を掛けられたまま見つめられて、私は動けなくなる。