die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第22章 episode.22
「え…?」
音のする方を見ると、枠からはみ出さんばかりに扉が膨らんでいるように見える。
何とも不思議な光景だった。
「そこから、離れなさい!」
ぐっと腕を引かれ、足がもつれそうになりながら距離を取ることになった。
振り返ると、扉はまるで生き物が暴れているかのように収縮を繰り返している。
私はレイジさんをすり抜けて、扉に駆け寄った。
「貴女、何を…!
下がりなさい!」
「でも!今しか…!」
私は躊躇する事なく扉に手をかけた。
もしかしたら、変化のある今なら…!
ぐっと力を込めるけれど、ビクともしない。
「っぐっ!お願い…!開いて…!」
収縮する扉はそんな私に反発するかのように大きな音を立てて、大きくうねると次の瞬間、私の身体はあえなく弾き飛ばされた。
と、同時に、ピタリと音が止む。
「…え…?」
何が…起こったの?
扉は収縮をやめ、あたりは静かになっている。
「どうやら収まったようですが…。
何だったのです、今のは」
レイジさんは眼鏡を押し上げながらそう言うと、私に手を差し伸べてくれた。
「大丈夫ですか?
まったく…無理をしないように言ったではありませんか」
「…ありがとうございます…」
私を立ち上がらせると、扉に向き直った。
スカートを払いながらその様子を見ていると、レイジさんはすっと、手を伸ばしていた。
あと少しで扉に触れそうな時、静電気でも帯びているかのようにバチッとその手が弾かれた。