die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第22章 episode.22
「…そうですか…」
「何か可能性があったんですか?」
「ええ。
この扉に掛けられているのはおそらく、闇の呪術です。
それを解く為に、相反する祝福のナイフの力を利用できるかもしれないと思ったのですが…。
まぁ…仕方がありません。
また、考えるとしましょう。
ほら、刃を出したままだと危ないですよ。
もう仕舞って下さい」
「あ、はい…」
闇の力…か…。
このナイフに込められている力を、私は完全に理解出来てはいない。
でも、これがヴァンパイアを倒せる力を宿していると言うのなら、確かに何か作用しても良さそうだと思う。
「…っ!」
「さ、そうとなれば、また城に戻りましょう。
行きますよ…って、貴女…!」
「ご、ごめんなさい、刃を仕舞おうとして…」
とても磨かれた鋭い刃は、少し触れただけだったけど私の指を傷付けた。
「まったく…。
血が出ていますね?
見せなさい」
私の手首を取り、指を確認するレイジさん。
「はぁ…ほら…出ているじゃないですか…。
たれてくる前に、処置しますからね」
指先を舌で舐めとられた。
撫でられているような感覚が指先から全身を駆け巡る。
「…ふむ。
まだ…出て来ますね…」
そう言って再び舌が指先を這う。
目を閉じ、唇を付ける表情はうっとりとしているようにも見えて、思わず見とれてしまいそうになった。