die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第22章 episode.22
やがて辿り着いた扉の前。
ピチョン…と水滴の落ちる音が聞こえる。
レイジさんは扉に手を掛けて力を込めた。
ガチャ、ガチャと重苦しい音を立てたそれは、動く事はなかった。
「力が弱まる気配はありませんか…。
では、貴女の出番です」
私?
レイジさんが開けられないものを、私がどうにか出来るとは思えないのだけれど…。
「ポカンとしていないで、出して下さい。
あの、祝福のナイフですよ」
「え、これ…ですか?」
ポケットを探って、取り出す。
「おや、ちゃんとお持ちでしたか。
いつも携帯しておくよう言っていたのに、もし持っていなければきついお仕置きをした所でしたよ、フフ…」
ぬ、抜き打ちテスト…ですか。
良かった、浮かれて忘れたりしなくて…。
私は曖昧に笑う事しか出来なかった。
「では、その刃を出して、扉に触れて下さい」
「は、はい」
言われた通りにくるりと刃を出し、ピタリと扉に押し当てた。
「…ええと、これでいいんでしょうか?」
半信半疑でレイジさんの顔を伺うと、押し当てたまま、扉を開けてみるよう言われた。
ガチャリ…。
押しても引いても、変わらず鈍い音が響くだけだった。
「だめみたいです」