die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第22章 episode.22
お掃除するって言っても…部屋は綺麗なんだよね…。
さっき使ったバスルームを洗っておこう。
広いバスルーム。
さすがに城だから豪華な造りだよね。
レイジさんが戻ってくるまで時間もあるだろうし、装飾の細かいところまで洗うぞと意気込む。
目の前の作業に集中していると、他の事は何も考えないでいられる。
「よしっ。後は、流すだけ!」
シャワーを強めに出して浴室内を流していく。
キュ、と蛇口を閉めた時、背後から声がした。
「鼻歌とは、随分とご機嫌なのですね」
「わっ!…レイジさん!」
自分の声が浴室内に響く。
「シャワーの音がするのに扉が開いていたので何をしているのかと思えば、掃除ですか」
「はい。さっき、シャワーを浴びさせて貰ったので…。
レイジさん、お帰りなさい」
「ええ。
そんなに動いているとは体調はもう良いのですか?」
「はい、熱はもうないと思います。
ゆっくり休ませて貰ったお陰だと…」
不意に冷たい手のひらが頰に触れる。
「っ!」
指が首筋にも少しだけ触れている。
「…ふむ。大丈夫なようですね」
そう言いながら額にも押し付けられた。
「ん…?顔が…赤い。
いえ、これは熱のせいじゃありませんね。ふふ」
レイジさんは可笑しそうに笑いながら、動けないでいる私を置き去りにして、部屋に戻ってしまった。
もう…またからかわれたみたいだ。
鏡と装飾部分、蛇口を乾拭きしてから私も部屋へ戻った。