die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第21章 episode.21
「気にして頂かなくても結構です。
こうした方が貴女にとっても良いでしょう?
…それに、私にとっても…」
そこまで言ったところで、彼女は身体を少し起こして、ベッドの端に移動している。
「ここ…空いてますから。
私は大丈夫なので…」
赤くなった顔をダウンケットで隠しているつもりなのか、丸分かりですよ。
「まったく…貴女と言うひとは…。
私の言う事がそんなに聞けないとはね…。
まぁ、いいでしょう」
ベッドに入り、急に静かになった彼女の方をちらりと見る。
顔をあちらに背けて…流れる髪の隙間から真っ赤になった耳が覗いている。
「ちょっと。
そんなに耳まで赤くして。
どう言う事ですか?
また熱が上がりますよ」
「う…。すみません」
まったく。
自分から誘っておいて、その反応は…。
相変わらずあちらを向いたままの彼女の髪に手を伸ばし触れると、一瞬身体を強張らせたように見えたが、次第に落ち着きを取り戻したようだ。
「ユイやアヤトくん達は…大丈夫ですかね…」
ふと、彼女が漏らす。
「あの、叔父さんの言っていたのって、ユイの事なんですよね…?
何をしようとしているんでしょうか?」
まるで、答えを期待していないかのような空に向けた問いかけに、私も口を開くことはなく耳を傾けていた。