die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第21章 episode.21
「私達…戻れるんでしょうか」
「…分かりません。
でも、きっと大丈夫ですよ」
彼女は、一度こちらを振り返ると、身体ごと私の方に向き直った。
「レイジさん?」
「…何です」
改まった様子で、何を言うつもりでしょうか。
「レイジさんは、私に…その…血を捧げるだけで良いって言ってくれるの、それで役に立てているならとても嬉しいです。
でも…もしこんな私にも、他に出来る事があれば何でも言って下さい」
「はぁ…分かりましたから…。
もう今夜は寝て下さい。
色々考えていると、身体に障りますよ」
頰に軽く口付けると、照れたように少し笑った。
「おやすみなさい」
貴女が目を閉じたのを確かめて、思い返す。
この部屋に再び戻って来た時、帰りたくないと思っていたなどと言うとは、思いませんでした。
こうして寄り添って眠る姿を見ていると、私も何故か安らいだ気持ちになります。
このまま、魔界でふたりで生きていく事になったとしたら。
その時も貴女は笑っていられるのでしょうか。
もし、私が貴女に永遠の時を与えられたら…。
うまくいけば、覚醒も止められるのではないか。
そんな事がぼんやりと頭をよぎる。
しかし…それがどう言う結果になるのかは、未知数なのだ。
それにしても、まったく…。
分かっていないのでしょうね。
ヴァンパイアと言う生き物は、いつだって血を欲している。
こうしてこんなに近くにいれば、私であっても貴女の血で満たされたいと思ってしまう。
「だから、ソファで休むと言ったと言うのに…」
欲望を抑える事には慣れています。
しかし最近は貴女を自由に吸血していましたからね…。
今夜はなかなか寝付けそうにありません。