die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第21章 episode.21
「あはは…本当に、そうですよね…。
あぁレイジさんの手…冷たくて気持ちいい」
額に当てた私の手に、全てを委ねるように目を閉じている。
「っあ、こら。
勝手に熱冷ましに使わないで下さい。
ほら、温かいものを飲んで」
椅子に掛けるよう勧めると、ストンと座り、カップから立つ湯気に鼻を寄せている。
「…ミルクティー。
…凄くいい香りです…」
「どうぞ。
それを飲んだらすぐ横になりなさい」
やれやれ…。
疲れからくるものでしょうか。
人間と言うものは、本当に弱い生き物だ。
しかし、まぁ…。
少し無理をさせていたのも事実かもしれない。
やがてティーカップを空にした彼女に、楽な格好に着替えるように伝えトレーを下げる。
「大丈夫ですか?」
「何だか…熱がある事を自覚したら、とても怠くなってきました」
ベッドの上で軽く引き寄せていたダウンケットを、私が肩まで掛けた。
「ゆっくり休む事ですね。
食事が出来そうなら、何か消化の良いものでも作ってきます。
きちんと寝ていてください」
「…ありがとうございます…。
…あっ」
何かを思い付いたような声を上げたので、彼女の方へ振り返った。
「何ですか?
何か必要なものでも?」