die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第20章 episode.20
「フッ。
気づいていたか」
人影が少しずつこちらへ近づいてくる気配は、私にも分かった。
私はポケットに手を入れてナイフを確認する。
「叔父上…!?
何故、こんな所に」
叔父…?
レイジさんが叔父上と呼んだその人を、蝋燭の光がぼんやりと照らすと、緋い瞳が鋭くこちらを見据えていた。
「それはこちらのセリフだ、レイジ。
お前こそこんな所で何をしている?」
「叔父上には関係の無い事です」
「ふん。まぁそう冷たい事を言うな。
お前が不可解な行動をしていた事は、使い魔から報告を受けている。
その女は人間だろう」
彼は私を見ている。
使い魔…?
思い当たったのは、図書館での出来事。
あの時、もしかして…?
「何故人間の女を魔界に連れている?
しかもその女…ただの人間という訳ではなさそうだ…」
「ハッ!叔父上…。
しばらく姿を見せないと思っていたらすっかり感覚が鈍っているのではありませんか?
このひとは、ただの人間です。
少々私の調べ物を手伝わせていただけの事…。
何もありませんよ」
「ふっ。…まぁいい。
今はもっと大事な事がある…」
あやしく微笑むと一歩こちらに歩みを進めてきた。
「一体何をしようと言うのですか?」
「邪魔をされては困るのだ。
少しでも障害になるものは少ない方が良い…」
その時、レイジさんを通り過ぎ、私に襲いかかろうとする力を感じた。