die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第20章 episode.20
「レ、レイジさん…?」
「…勝手な事をしないで下さい」
向けられた背中からは、ただ単に昔の写真を見られたからと言うだけの理由とは思えない様子が感じ取れる。
「ご、ごめんなさい…」
「……ふん。
まぁ…、大した事ではありません。
貴女も忘れなさい」
レイジさんは写真を伏せたまま、引き出しの奥にしまった。
「それよりも、準備は出来たのですか?
早く戻りますよ」
「あ、はい。
すぐに行けます」
何でもない事?
そんな風にはとても見えなかった。
何か…事情でもあるんだろうか。
腰にまわされた腕に誘導されるまま、部屋の外へと出た。
こちらとあちらを繋ぐ扉へと向かう途中、最後の一本道でひやっとした空気を感じる。
そう言えば、こちらへ来た時もそうだった。
ここだけは何となく苦手だなぁ。
早く抜けてしまいたい。
そんな事を思っていると、突然レイジさんが立ち止まった。
どうかしたんですか?
そう言いたかったのだけれど、私が聞くより先に、レイジさんは私の背後に視線を向け、それと同時に私を自らの背後に隠すように立った。
「誰です?」
暗闇に向かって問い掛けると、何も見えなかったそこに、フッと人影が現れた。
驚きのあまり息を吸ったまま吐く事を忘れ、レイジさんの洋服に掴まる。