die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第20章 episode.20
一旦部屋に帰り、人間界に戻る為、荷物をまとめる。
思えば、こちらに来てから殆どの時間を二人で過ごした。
その時間も終わりかと思うと少し…名残惜しい。
そんな事を思うなんて、私はどんどん贅沢になっているんじゃないだろうか。
部屋の中を見渡す。
よく考えたらこんな所、滅多に泊まれるものじゃないよね。
昨日は来たばかりで、しかもここが実家だと告げられて、驚いてそれどころじゃなかった。
アンティークな調度品や暖炉、壁のクロスに至るまで…素敵な部屋だな。
その時、ふと飾ってある小さな写真に目が止まった。
これ…もしかしてレイジさんの小さい頃?
可愛い。
この頃から頭良さそうな顔してるなぁ…。
でもちょっと無愛想かも。
ふふ、でもそれもレイジさんらしいのかも。
隣にいる女の人はもしかしてお母さんかな?
「準備は出来ましたか?
そろそろ行きま…」
「あ、はい。
あのこれ…もしかして」
私が写真の事を尋ねようとしたのと、レイジさんが私の手から写真を奪ったのは同時だった。