die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第20章 episode.20
何処へ行くのだろう、と思いながら連れられていると、城に戻って来た。
案内されたのはその書斎。
ここにもまた、沢山の書物があった。
目の前のカップからは、レイジさんが淹れてくれた紅茶がいい香りを放って居て、思わず深呼吸したくなる。
気持ちをほぐしてくれるような癒される香りだなぁ。
私には紅茶を勧めてくれたけれど、レイジさんは書斎の本棚を端からチェックしている。
「…はぁ。
もしかしたら、と思ったのですが…ここにもありませんね」
数冊手に取っていた本を棚に戻している。
「そうですか…。
あの、図書館の本がここにあった事があるんですか?」
「…えぇ、昔々ですがね。
あの図書館は管理は厳重ですが、王立なだけあって我々の家の者には少々甘いところがあります」
なるほど…。
まぁ、身内みたいなものだもんね。
レイジさんは私の向かいに座ると、カップに口を付ける。
「戻りましょう、屋敷に」
私も、とカップを傾けかけた手を止めた。
「え…でも本は?」
疑問に思う私に、レイジさんは眼鏡をくいと押しながら答えた。