die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第20章 episode.20
「おかしいですね…。
ここだけが抜けている」
今日は開館からずっとここに居るけれど、利用者は私達以外居ないのだ。
それなのに、続きの巻が見つからない。
「禁帯出の本を持ち出したり出来るんでしょうか?」
「いえ…。
ここは王立図書館ですよ。
書物の管理は厳重です。
それが禁帯出となれば尚のこと。
通常なら持ち出す事など不可能です」
「通常じゃ…ないって事なんですね…」
「ふむ…。
ちょっと…確認しておきましょうか」
レイジさんは何かを思いついたように言うと、こちらを振り返った。
「?」
「何をぼんやりしているのです?
行きますよ」
そう言って、固まる私の手を取り歩き出す。
図書館の外へ出ると、通りを歩く人達がこちらに注目する。
時々耳打ちしたりしながら、じっと見られて何だか居心地が悪い。
皆きっと…分かってるんだよね?
私が異種族だって事…。
それでも昨日と今日で分かった事がある。
皆こっちを見るだけで襲って来たり近づいて来さえしないのは、王家のヴァンパイアであるレイジさんが一緒に居るからなんだ。
もし一人になったりしたらどうなるか…。
想像するのもはばかられるかも。