die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第19章 episode.19
「レイジさん…」
「いえ…大丈夫ですよ。
欲望のままその血を啜るような事はしません。
慣れない場所で疲れたでしょう。
早く休むといいですよ」
そう言って髪を撫でてくれた。
「…もし…。
私が、吸って欲しいって言っても…ですか?」
「なっ!貴女…。
そう言う事を言わないで下さい。
大体、貴女だって懲り懲りでしょう。
私に酷く吸血された事を忘れたのですか?
…それとも、私をからかっているのでしたら、只では済ませませんが」
「からかってなんて、いません。
…欲張ってごめんなさい。
ただこうしてレイジさんと一緒に過ごせる事が嘘みたいで、事実を知ってからもこうして、傍に居られることが本当に嬉しくて…。
なのに、欲張るなんていけなかったですね」
レイジさんが理知的な人だって事は分かっているし、そう言う所も含めて尊敬してるのだから。
「あの…。
もしお仕置きするなら受けますから…許して下さい」
湿っぽくなるのは嫌だから、ちょっと冗談ぽく言ってみる。
「…なんて、あまり厳しいのだったら…自信ないですけど」
「はぁ……」
すごく深いため息が頭上から聞こえたんだけど…。
「まったく…。
貴女はそんなにお仕置きして欲しいんですか?」
そう言われて顔を上げると、眼鏡を外しテーブルの上に置いた。
「でしたら、今からして差し上げます」
「えっ…!ちょ、あ!」