die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第19章 episode.19
「おや。
言っていませんでしたか?」
「き、聞いていません…!
こんな所に住んでいるなんて、まるで王様みたいじゃないですか。
そんな事が…」
「ええ。
ヴァンパイアの王、カールハインツが私達の父上ですよ」
「ヴァンパイアの…王…?!」
そう…言えば…。
"『…私達を見くびらないで欲しいですね…』
『この家の者は…ヴァンパイアの王家の血を継ぐ逆巻家の者ですよ。ハンターごときにそう簡単には殺させない』"
…そんなような事を言っていたかも…。
でも王家の血を継ぐって…まさかそんな事とは…。
レストラン経営者じゃなくて、ヴァンパイアの王??
じゃあ、レイジさんは、あの屋敷の兄弟皆は、王子って事?!
「ちょっと、マイ。
フリーズしていますよ」
私のお父さんは…。
とんでもない人達を敵にまわそうとしていたんじゃ…?
そのまま放心状態で手を引かれて案内された部屋で、勧められたソファにストンと座った。
「これで、少し落ち着いて下さい」
目の前にいい香りのする紅茶と、サンドイッチが置かれた。
「ありがとう…ございます…」
「そんなに驚きましたか?」
「はい…。
色々と…びっくりしました。
あの、もしかしてここに皆さんお住まいなんですか?」
紅茶に口を付けようとしていたレイジさんが、一瞬その手を止めたように見えた。