die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第19章 episode.19
心音が大きくなるのを感じながら、本棚を離れるけれど、何かが追ってくる様子はなかった。
足早にレイジさんの居る場所へ戻ると、何を図書館の中で慌てているのか?と言わんばかりの視線が、眼鏡の奥から私を刺してきた。
「い、今何か居たんです」
意識して小声で報告する。
「…あの、向こうの本棚のところ…。
すぐ身を隠されて何なのかはよく分からなかったんですけど…」
「ふむ…。
では、様子を。
貴女は私の後ろに居なさい」
「はい…」
読み終えた本を数冊重ねると、椅子から立ち上がった。
「ここです。
この列の、向こう側…」
さっきの場所を説明するも、既に何もなかった。
「何も居ませんね。
痕跡も…あぁ、居ました」
レイジさんが見上げる方向を見やる。
「あれは…!」
「何者かの使い魔でしょう。
貴女は気にする事ありませんよ」
そうなの…かな。
監視されてるとか…?
「今日は役立ちそうな記述は見付けられませんでした。
この分を戻したら、何冊か借りて出ます。
また明日、続きを」
「あ、はい。
分かりました。
じゃあ私戻しますから、レイジさんは借りる本を見て下さい」
ずっしりとした本を受け取り、棚に戻す。