die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第19章 episode.19
入ってすぐに襲われるなんて思っていなかったから、驚いた。
私に襲いかかろうとしたのは、猫くらいの小さな生物で、飛びかかって来たところを、間一髪でレイジさんが追い払ってくれたんだよね。
これは今だから言えるけれど、その瞬間は何が起こったか分からなかった…。
魔界の中でも理性より野性の強い、獣に近い生き物らしくて、どのエリアにもしばしば現れるんだそう。
—来ていきなりそんな事があったから、多分心配してくれているんだと思う。
ここは王立の図書館だから、そう言う獣のような生物は入り込めないって言っていた。
だから大丈夫だとは思うけど、私も気をつけないと。
ポケットに入れているナイフを外から触って確認する。
ああやって急に出てこられたら、とっさに身を守れる自信はないけど、心構えってものは大事だよね。
その時、視界の端で本棚の影から何か動くのが見えた。
それは、身を隠すようにすぐ棚の向こうへと消える。
「何か…居る…」
緊張感で身体に力が入る。
攻撃された訳じゃないから変に刺激しない方がいいよね。
そっとポケットに手を入れてナイフに触れながら、そちらには気付いていないフリをしつつ、本を探している素振りでゆっくり距離を取る。