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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第17章 episode.17


くるりと柄から刃を出してみる。


「美しいナイフではないですか。
…さぁ、練習ですよ」


刃には自分の顔が映るくらい綺麗に磨かれている。
この刃が、ヴァンパイアを…?


刃越しにレイジさんの顔が見える。


「どうぞ、ここですよ」


自分の左胸を指差している。


そんな事…出来ない。


いくら、まだ私がヴァンパイアハンターとして覚醒していないからと言って、レイジさんに刃を向けるなんて。


いや…覚醒していないからこそ、出来ないのかもしれない。


覚醒してしまえば、自分がどうなるのかなんて分からない。
だから怖いのだ。


震える手は、刃先を自分に向けていた。


この手を、そのまま進めれば…。


遅かれ早かれ、こうするつもりだったんだ。


自分の心音がやけに響いてくる。


それはだんだんと早く打ち付け、走っているかのように息も上がってくる。


目を閉じた時、強い力に押さえられて、刃先は私に少しも当たる事は無かった。


「…貴女の覚悟はわかりました…。
しかし、貴女は思ったよりも愚かですね」


ナイフが手から剥がされる。


「…え…?」


レイジさんの手に渡ったナイフは、そばのテーブルに置かれた。


「貴女は自分の事しか考えていない。
分かりませんか…?
貴女が私を刺すことが出来ないと言うように、私だって貴女を失いたくは無いのですよ」


「…っ…。
レイジさん…」
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