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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第17章 episode.17


とても…敵わないと思った。


「う、う…」


「って…貴女…泣いているのですか?」


「いえ…これは…っ」


急いで涙を拭いて、座り直す。


「あの使い魔くんに助けられたお陰で…私は…。
だから、処分とか…しないで下さい」


「そんな事を気にして…?
心配はいりませんよ。
貴女を助ける事も指示のうちだった訳ですし…。
結果的には貴女はここへ戻って来た訳ですからね…。
しかし…そんなに涙を流さなくとも…。
まだ、不安定なのですか…?
ほら、こちらへ」


レイジさんはベッドに座ると、私を引き寄せて抱きしめてくれた。


髪を撫でてくれて…。


あの日、初めてこの部屋で、薬を飲まされた時も…泣いた私をこうして慰めてくれた。


今思えば、あの時心が動かされてたんだと思う。


酷い事をされたのに、変な話だよね。


レイジさんにこうされると…私は鼓動が早まるのに、いつの間にかとても落ち着くようになっていたんだ。


「どうして、突然出て行ったのですか?」


「……」


肩越しに聞かれ、その単刀直入な問いに、私は言葉に詰まってしまう。


「さっきも言いましたが、貴女がこの生活に嫌気が差して出て行ったようには思えないのですよ。
おそらく、何か特別な事情でも出来たのか…」


「……」


「記憶が戻りましたか?」


ピクリと肩が反応してしまった。
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