die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第16章 episode.16
熱を帯びた胸の奥がきゅっと音を立てて、頭の中がとろけてくる。
触れたくなって伸ばした手でレイジさんの背中に腕を回す。
ーああ…、生きてる。
この手に触れる感触と、頭の中の痺れと、柔らかな口付けが私にそう感じさせてくれた。
「レイジさん…。
あったかくて…美味しかったです…私…私、なんで美味しいんだろう…」
「では……あれこれ考えるのは、食べてからにしたらいかがです?」
肩口から聞こえる、その言い方が何だかおかしく思えて、少し笑ってしまった。
「その方が、建設的な考えも生まれるというものです。
ほら、どうぞ?」
置かれた食器に手を伸ばし、おかゆをすくって差し出されたスプーンを見つめて口を開ける。
「美味しい…」
「それは良かった。
ちゃんと全部食べるんですよ?
…はい」
「あの…いいんですか?
食べさせて貰って…」
「今更、何を言っているのですか。
それとももしかして…、口移しの方をご希望なのですか?」
「…っ!
…いえ!
これで、いただきます」
作ってくれたおかゆは本当に美味しかった。
ふんわりと溶けた卵は自治会長さんがくれたものだそう。