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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第16章 episode.16


部屋の中に戻ると、彼女が変わらず横たわっているのを確認して一旦食事を置く。


そばに行ってその手を取り髪を撫でた。


貴女は私がこうすると、いつも安心した顔で笑っていた。


貴女の笑顔は、闇の住人であるヴァンパイアの私にとって心を照らしてくれるような華やかさに満ちていた。


またその笑顔が見たい、と願うのは自分勝手だろうか。


その為に、私に出来る事があるならば、邪魔をしているものを取り除いてあげたい。


そう、思っている。


「…ん…」


ゆっくりと目が開く。


「気分はどうですか?」


話しかけると瞳がこちらを向く。


声は聞こえているようですね。


「少しは落ち着きましたか?」


身体を起こしてベッドの上に座らせる。


「食事を用意しましたよ。
食べて下さい」


下を向きぶんぶんと首を横に振る。


「随分と空腹なのではないですか?
…持てますか?」


スプーンを渡そうとしたら手を引っ込められた。


「おや…。
はぁ…。貴女は、どこまでも手間を掛けるひとですね」


私に甘えたいのでしょうか。


普段でしたら鬱陶しいと感じる事も、貴女ならば何故か許せてしまうものなのですね。


「仕方ありません…。
…はい。どうぞ。口を開けて」


スプーンにおかゆを乗せて口元に運ぶ。
けれど、首を振るばかりで口を開けようとはしない。


「いい加減、怒りますよ。
ほとんど何も食べていないんでしょう?
私が作ったものを食べられないと言うんですか?」


「だって…食べたら…生きてしまうじゃないですか…。
だめなんです…早く、早く私を…!」


「黙りなさい!」
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