die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第16章 episode.16
「どうしたのですか?
貴女らしくもない」
レイジさんはベッドに座ると、腕を伸ばして来た。
そっと抱きしめられているはずなのに、胸はぎゅっと苦しくて息がしにくい。
「だめ…」
離れようと押し返したけれど、それは叶わなかった。
「忘れた訳ではないでしょう?
力では私達ヴァンパイアに勝てない事を。
これ以上抵抗したところで、どうにもならないと貴女なら理解している筈でしょう」
そう…。
どうにもならない事なんて、もうとっくに気づいてる。
あのまま、遠くに行けていたらどんなに良かったか。
なのに、こうしてまた腕の中に居る事をどうしようもなく喜んでいる自分もいる。
だって、私はずっとここに居たかったのだから…。
矛盾だらけの自分に嫌気が差してくる。
色んな声が頭の中で叫んで居て、許容範囲を超えてくる。
「離して貰えないのなら…その力で…殺して下さい…」