die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第15章 episode.15
ふふ。
私の好きだった声…。
鼻をすすって目に溜まった涙を手で拭う。
「やっと見つけましたよ……マイ……」
え?
今度はさっきよりはっきりと聞こえた。
まさか…!?
急いで立ち上がる。
絶対に、捕まる訳にはいかない。
振り返るけれど誰も居ない。
やっぱり、幻聴?
…疲れてるんだ、私…。
食事もろくに摂らずに歩き通してたし、無理もないよね…。
こんな小さな村に、まさか居るとは思わないだろう。
それに、皆もう私の事忘れちゃってるかもしれないし。
寂しいなんて思っちゃだめなんだ。
その方がいいのだから…。
今日はもう休もう。
体力も回復しておかないと。
踵を返すと今度は幻覚?
嘘?
どうして?
もう、二度と会えないと思った人がこちらへ歩いて来る。
「貴女がこんなに隠れんぼがお上手だとは思いませんでしたよ…」
聞こえる。
幻聴じゃない。
後ずさり首を振る。
見える。
幻覚じゃない。
反対方向に走るとそこにはライトくんがいて、ひるんだ隙に手首に強い力を感じる。
掴まれてしまった。
「嫌っ!」
手を振り払う。
手首はしっかりと握られていて振り払えない。
「離して下さい!」
「離しません!」
「離して!」
力いっぱい手を引いても離してくれない。