die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第14章 episode.14
「では、行ってきますよ」
「はい。
…気を付けて」
レイジさん、ありがとう。
私は貴方を…。
貴方の事を…。
忘れません。
最後に見た、いつもの様に制服をちゃんと着て、凛としている後ろ姿を私はこの目に焼き付けた。
扉が閉まると、すぐに準備に取り掛かかる。
数時間前に買ってきておいた材料を広げキッチンに立つ。
そして料理の合間を見て各部屋を回る。
とても目まぐるしかったけれど、忙しくしていた方が名残惜しさが少しでも紛れたと思う。
水と少しのお菓子、夕方一緒に買っておいた雨具を鞄に入れようとすると、外から大きな雨音が聞こえ始めた。
早速役に立つなんて。
持ち物にタオルも加えて、鞄の口を閉め肩に掛け、小さくたたまれているレインコートを広げ身を包むと、扉に手を掛ける。
皆、本当にありがとう。
屋敷内を一度振り返り、祈る。
どうか、皆元気で…。
…さようなら。
外は真っ暗で酷い雨だ。
都合よく足音を消してくれる大きな雨音。
時折光る雷が、濡れた地面を照らしてくれる。
首にかけたライトは少し頼りなく、私は屋敷を後にした。