die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第13章 episode.13
「…ちょっと…貴女何故、そんな切ない顔をしているのです?
…さ、立って下さい」
レイジさんは私を立たせ、自分も立ち上がりそのまま後ろから抱きすくめた。
「はぁ…。
前に申し上げた筈でしょう?
貴女とこうしていると、自分を抑えられなくなりそうになるのですから、そう無理を言わないで下さい…」
「はい…。
すみません…」
「貴女は物分かりが良くていいですね。
そう言う女性は好きですよ。
さ、今夜は部屋に戻って…」
緩められた腕が離れていく。
「だけど…」
—最後だから、今はもう少し離さないで居て欲しい。
言えない言葉は飲み込んで封じ込める。
少しでも下手な事を言えば、頭のいいレイジさんにはすぐにばれてしまうだろう。
私にはそれでも悟られない自信は全くない。
絶対に悟られる訳にはいかないのだから、何も言う事が出来ない。
その代わりに身体を反転させて、私から腕を回して抱きしめた。
「貴女ね…。
聞いて居ますか、人の話を」
「…ごめんなさい。
色々嬉しい事が有りすぎて、いつもの自分らしくないのかもしれません。
こんなの…レイジさんに嫌われてしまうかもしれないと分かっています」