die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第13章 episode.13
「今度、あの食器で食事しましょう。
私がお茶を淹れて差し上げますよ」
すぐそばで聞こえる声に振り向くと、いつもは見上げるレイジさんの顔が同じくらいの目線に見えた。
「返事は…?」
「…はい…」
「ふふ。よろしい」
少しだけ笑って、私を抱き寄せるとこめかみにキスをした。
本当なら夢見心地になるような言葉とキスだけれど、今の私にとっては、とても悲しい色を帯びている。
それでも、まだ離れたくなくて…。
見つめてくれる透き通る瞳に、まだ映っていたい。
私は欲張りみたいだ。
少し顔を見て、お礼を言えたらそれでいいと思っていた筈なのに。
「レイジさん…」
「何です?」
「あの…こんな事を言うのは、恥ずかしいんですけど…」
鼓動が大きくなってきているのを自覚する。
恥ずかしいし緊張するけど…。
「何ですか?勿体ぶって」
「…もっと…して欲しいです」
レイジさんは少し驚いたように私を見て、でもすぐに諭す様に言った。
「…だめですよ」
なだめるように髪を撫でてくれるのが切ない。
そっか…。
一大決心はあっけなく断られたけれど、でも、こうして髪を撫でて貰えるのも、とても落ち着く。