die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第13章 episode.13
—ガチャリ。
玄関の扉が開く音がし、皆が帰宅する。
私は、いつものように迎え入れなければ。
「おかえりなさい」
リビングのドアが開いて、一番に飛び込んで来たのはカナトくんだった。
「すごくいい匂いがします…!
もしかしてこれは…?」
「う、うん、今日はプリンだよ」
さすがカナトくんだな。プリンには目がないみたい。
「やった!
僕の分は大きいのにしてくれましたか?」
「あ…ごめんね…。
大きさは全部一緒じゃないと均一に焼けないから…。
じゃあ、カナトくんの分は二個にしようね」
「カ〜ナ〜トくん。
あんまりマイちゃんを困らせると、こっわ〜い人から怒られちゃうよ?
んふ♪」
「だ、大丈夫だよ、ライトくん。
少し多めに作ってあるから」
ライトくんがカナトくんに耳打ちしてるけれど、ポーズだけでその声は丸聞こえだ。
「誰ですかね?
その、怖い人とは」
「あ…」
最後に入ってきたレイジさんと目が合った。
不自然な顔してなかったかな、私…。
こんなんじゃ、だめだめ。
しっかりしなきゃ。
一旦キッチンに戻り、気持ちを整え直して、プリンを持ってリビングに行く。
「アヤトくんったら、今日やけに静かだね〜?
お腹でも痛いのかな?」
からかうようなライトくんの声に、アヤトくんの顔を見てみると、一見すると機嫌が悪いようにも見えるけれど、確かにちょっと元気がなさそうに、ソファに座った。