die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第12章 episode.12
「それじゃ、戻りますね」
少しの名残惜しさを感じながら、ドアノブに手を掛けようとすると、引き止められた。
「ちょっと、待って下さい。
少し目を閉じていて頂けますか」
「え、目を?」
何だろう?
唐突な申し出に、疑問に思いながら目を閉じる。
「こ、これで良いですか?」
「手を、出して…。
はい。そのままで…」
少し低い声で言われて、ドキドキしながら手を差し出し待っていると、手首に冷たいものが滑る感触がした。
手の甲に口付けが落とされたのを感じ、驚いて目を開ける。
「え…これ、私がお店で見てた…」
目に映ったのは、あのお店で見た薔薇のチャームのついたブレスレット。
それが私の手首で光っている。
「貴女があまりにも物欲しそうな目で見ていたので、つい買ってしまいました」
「可愛いと思って見てましたけど…いつの間に…。
私そんな顔をしてました…?」
自分の意識の無いところで見られていたかと思うと恥ずかしくなってきた。
「…ふっ。
すみません、冗談ですよ。
これは、私からのプレゼントです。
見たかったのです、喜ぶ貴女の姿を」
いつになくストレートな言葉に、戸惑いと大きな喜びで胸がいっぱいになる。