die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第12章 episode.12
「ただいま〜」
レイジさんが玄関の扉を開けてくれて挨拶したけれど、誰の返事も無い。
返事がないのはいつもの事なんだけれど。
それぞれが、各々したいように過ごしている。
「沢山買いましたね」
珍しいパスタやアンチョビ、缶入りの紅茶など色々選んだものをキッチンにしまっていく。
「そう言えば…。
この前言っていましたよね?
貴女が煮物を得意としていると」
レイジさんが思い出したように言う。
「え…?
あ…もしかして、肉じゃがの事ですか?
得意って言っていい程か分かりませんけど…」
「今度、食べさせて下さい。
私だけの為に」
「…っ、分かりました…。
お口に合うといいんですけど…」
「フッ、楽しみにしていますよ」
何気ない会話を覚えていてくれて、そんな事を言ってもらえるなんて、嬉しい。
全て片付け、部屋に戻る。
「今日はありがとうございました。
買い物楽しかったです」
私の部屋の前でお礼を伝える。
「まぁ私も気分転換になりました。
人混みは好きになれませんが…。
街中もたまにはいいですね」
付いて来てもらって大丈夫だったか少し心配だったから、そう言って貰えて安心した。