die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第12章 episode.12
暫く歩いているけど…。
どこに行くんだろう。
まだ、帰り道って訳ではなさそうだけど…。
無理難題な要求だったら、どうしよう。
綺麗な姿勢で颯爽と歩く後ろ姿からは、何も窺い知る事は出来ない。
「さ、着きましたよ」
立ち止まったのは、輸入品を扱うお店の前。
「ここ…?
何をすればいいんですか?」
「前からちょっと気になっていたのです。
こちらで買い物して帰りましょう」
「買い物?
…私は何をしたら良いですか?」
「おやおや、貴女は私が何を言うと思っていたのですか?
非道い人ですね…。
お店は、買い物をする所ですよ。
それ以外何か?」
「それだけ…?
でいいんですか?」
「はい。
なかなか一人では来られませんから。
お付き合い頂けますね?」
いつもの得意げな笑顔で言われ、じんわりと胸の奥から温かいものが染み渡る様に広がった。
私が気を遣わなくて済むようにしてくれたのだ。
「はい…!勿論です」
どんなに冷たく厳しいように見えても、心根は優しい人なんだ。
少なくとも、私にとってはそう。
ほんの少し、新たな心に触れた気がしてそれがとても嬉しかった。