die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第12章 episode.12
せめて荷物を持とうと思っていたのに、その手には何も見当たらない。
「割れ物ですし、荷物になりますから配送にして貰いました。
明日には着くそうですよ」
「そっか…。その方がいいですよね。
あの…レイジさん」
少し先を歩くレイジさんが立ち止まり、追いつく。
「ありがとうございます」
「ん…?
何です、貴女まだそんな顔をして…。
素直に喜べないのですか?」
そんなつもりは無かったのだけれど、申し訳ないと思う気持ちが顔に出てしまっていたようだ。
「いえ!勿論とても嬉しいんです。
でも…私には何も返せるものがないなぁって考えていたんです」
少し力なく笑いかけると、大きなため息が聞こえた。
「やれやれ…。
貴女もなかなかに頑固なのですね。
そんな顔をするのでしたら…。
貴女には、今から私の言う事を何でも必ず聞いて頂きます」
「え…?」
「それでおあいこ、という事でご納得頂けますか?」
「え…は、はい…」
何だろう。
何を言われるんだろう…。
ついすぐ返事をしてしまったものの、あんまり恥ずかしいのとか辛いのは嫌だな…。
「では、こちらに」
よく分からないまま、少し後ろを付いていく。