die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第10章 episode.10
私がかすかに反応しようとした時には、もう牙が肌に痛みを与えていた。
「あっ!痛ぁ…」
鋭い痛みが走り思わず目を閉じて耐える。
「んっ…ふっ…。
…痛いですか?ふふっ。
当然です、痛くしていますから」
再び牙が肌を傷つけて深く突き立てられると、ジンと痛くもあり、次第にふわふわと高揚感が広がり力が抜けて行く。
牙は一度抜かれて、温かいものが肌を流れ出ると舌で舐め取られる。
立っていられそうになくて、レイジさんの服にしがみつく。
「…嗚呼…、美味しい。
熱く私の舌に絡みついてきます…。
もっと、寄越しなさい…」
「うっ…!」
新たな場所に痛みを与えられる。
「ふふ…。
私は腹を立てている事をお忘れなく…」
だめ…本当にもう立っていられない。
そう思った瞬間、抱き抱えられて窓際に座らされた。
「ここなら貴女の顔もよく見える。
さぁもっと聞かせなさい、その声を」
私にもよく見えた。
蒼白く窓から入る月明かりに、白い肌と静かに燃える赤い瞳。
口から覗く血の滴る牙に背中がゾクリとすると同時に…その先端が私にこの痛みと熱を与えているかと思うと、愛しい想いがこみ上げてきた。