die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第9章 episode.9
「はい。
家事は私が主にやっていましたので…。
って言っても、料理はそんなに手の込んだものじゃなかったですけど…。
肉じゃがとか、かぼちゃのそぼろ煮とか普通の家庭料理です」
「ほぅ。
本で見たことはありますが、それはまだ作った事がありませんね」
「えっそうなんですか?
意外です。
…でも、そっか家庭料理なんて作らないですよね」
もしかしたら、和食とかあまり食べないのかもしれないな。
想像してみると、今作っているような洋食は似合うけれど、和食を囲んでるところはしっくりこない。
「私からしたら、品数のあるコース料理を作る方がすごいと思います。
レイジさんって兄弟思いなんですね」
レイジさんは背中を向けたまま横目で私を見ている。
「…そんな事はありません。
気持ちの悪い事を言わないで下さい。
私は料理をするのが好きなだけなのです」
「そうは言っても、やっぱりすごいです。
あ、デザート…ですか?」
レイジさんの手元を覗いてみると、ケーキにクリームが塗られてこれからフルーツを乗せるところみたい。
さっき、二階に漂ってたスポンジの焼けるいい匂いはこれだったんだ。
「わぁ!美味しそう。
ホールのケーキなんて久しぶりです」