第3章 王様と私
『…知ってたの?』
岩泉「あ?…あー、及川のやつか」
飛雄はあれからジョギングで帰って行った。
次会ったらまた気まずいじゃんか、といえば、会わなきゃいいべ。と言われた。
地区が同じ限り無理だぞそれ。
岩泉「つーか、お前もそんなに男に笑顔振りまくなよ」
『…振りまいてる覚えない』
岩泉「同じクラスのやつの話も聞いてるからな」
『え…』
アイツ…
眉間に皺が寄るのがわかれば、ハジメちゃんがこっちを向いて、なんつー顔してんだよ。といい笑いながら私の眉間の中心に指を1本グリグリと当ててきた。
『…怒る?』
岩泉「怒んねえよ」
『そっか』
岩泉「心配してんだかんな」
『うん』
ちょっとは怒ってくれたり妬いてくれたりしてもいいんだけど…
と思いながらもハジメちゃんの手をパシッと取って冷たくなっていた指先を温める。
『ホント子供体温だよね』
岩泉「あったけーからいいだろ」
『うん、頼りになってる』
ガバッと私に抱きつくハジメちゃんに、笑いながら帰り道を歩いていれば、目の前で女の子と歩いている男を発見する。
ハジメちゃんは嬉しそうな声で
岩泉「邪魔しに行くか」
と呟いたので、私は呆れながらも行ってこい!と声をあげた。
及川「じゃあ…また明日ね、今日はありがとう」
女「うん…ね、ねぇ及川くん…キスして…?」
及川「…ごめん、それは…まだかな」
女「…そっか…じゃあまた…明日」
影(電柱)でコソコソしながら見ていれば、ハジメちゃんが私の肩に顔を乗せているので、恥ずかしさとくすぐったいのが同時にくる。
近いし、ハジメちゃんの匂いするし…
『ちょ…ち、近いって…ハジメちゃ』
岩泉「うるせ」
『!?』
急に振り返る二人に慌てて小さくなる私たち。
180ないと言ってもでかいもんはでかい。
全くふたりの会話が頭に入らない、私は小さくなりながらハジメちゃんに訴えるがまったくもって無視だ。
…ダメだ、心臓がもたん…
『だ、だから離せって言ってるでしょ!?!?』
岩泉「いでっ!!!」
及川「…!?」
女「へ…?」
ごめん、徹。