第2章 彼らと私
『溝口さん』
溝口「あ?」
『これ、とりあえず…注文お願いします』
溝口「おぉ、さすが早いな…サンキュな」
放課後、紙を渡してから仕事に戻る。
一年も入ってきたことだし私の仕事も着々と減っていった。
溝口さんは紙を見ながら自分の仕事場に戻っていく。
その代わりに監督がみんなを見ていた。
『烏野…練習試合…か』
ボンヤリ口に出した言葉は誰かに聞かれた様子で、後ろの方から不安?と問いかけられた。
聞いたことのある声の正体は花巻で、私は持っていたドリンクを床に置いてからニッコリ笑う。
『全く?』
花巻「ふぅーん…つかあれだろ?確か及川と…岩泉と金田一と国見の元チームメイト…?」
『うん、そうだね。あ、ハイ!のむ?』
花巻「…サンキュ」
花巻にドリンクを渡してからみんなに配ろうとすれば一年がやってくれた。
…仕事がない。
贅沢な悩み事だが、そんな場合じゃない。
嬉しいような悲しいような…そんな顔をしていれば、花巻の笑う声が耳に入った。
『な、なに?』
花巻「すっげえ複雑な顔…!!」
『そりゃ複雑だよ〜…だって今までやってきたことが出来ないんだよー?なんつーか…こう…』
花巻「俺らと関係が取れなくなるとか?」
『そう!それそれ!私はさほら、プレー出来ないから、こんな事でしか繋がれないじゃない?』
花巻「…ブフッ」
花巻は笑いながら私の方を見ていて、私はなんだか恥ずかしくなりそばに置いてあったタオルを投げた。