第5章 Ⅴ
いつか私はシュウを忘れてしまうのだろうか?
ゆっくり、ゆっくりとこの気持ちも消えてなくなるのだろうか?
声も、匂いも、抱き締めてくれた腕も、髪を梳く優しい指先も・・・永い生の中綺麗に無くなってゆくの?
それを受け入れなくてはいけない
だってシンくんの手をとったのは、紛れもない私なのだから
それならばいっその事私は────・・・
扉をノックする。
「入れ」
「カルラさん私思い出したい・・・
始祖として生きたい。」
カルラさんとシンくんに迷惑かけない程度には強くいたい。
「そうか・・・」
そう言ったカルラさんの顔は微笑んでいた。
その微笑みに胸が少し痛んだ...
それからは、カルラさんと共に色々な書物を読み・・・
「カルラさんここは・・・」
カルラさんの膝上に手にしていた本を開く
「ん?そこはだな・・・」
優しく教えてくれるカルラさん。
「カルラさんの髪綺麗。」
「人の話を聴け。」
カルラさんの大きな手が私の頭を優しく叩く。
「ごめんなさい。」
いつだってカルラさんは優しい。
「ただいまー。」
シンくんが帰ってきた
「おかえり!
使い魔呼ぶ練習しよ!」
「今帰ってきたばかりなんケド?」
「では、私が教えよう・・・」
「カルラさん今日はずっと私に
付きっきりだったから」
「ハイハイ。分かったよ・・・
おいで。」
伸されたシンくんの手をとった
「・・・あまり無理をするな。」
「えっ・・・」
無理してるつもりなんてなかったのに、
何故かカルラさんには全て見透かされている。
「・・・今日はまだ使い魔と散歩に行ってないから、
付き合ってくんない?」
いつもいつも二人にフォローされてしまう。
「シンくん・・・有難う」
「別に・・・なにもしてないけど?」
あ、今のシンくんすこし・・・少しだけシュウに似てる。
どうしようもない考えを振り払う様に、シンくんの手を握った。
「お散歩行こー!」
握り返してくれる手に罪悪感が募った。