第5章 Ⅴ
私は汚されてなんかいない。
でも、始祖の生き残りは私達3人しか居ない・・・同胞を蔑ろになんて出来ない。
万魔殿での暮らしを、思い出せない私にシンくんとカルラさんは優しくしてくれる。
だけど、こんな私が始祖を名乗っていいのだろうか?
逆巻でなければ────なんて思った日が懐かしい。
今はこんなにも逆巻でありたいのに...
シンくんが言った様に忘れてしまえばいいのかな?
シンくんが言った様に・・・目を閉じる前に・・・目を開けた時に...
瞳に映っていて欲しいヒトは───
まるで目の前に居るかのように見える少し微笑んだ顔、ムッとした顔、寝ている顔。
「あぁ・・・シュウだ。」
今更気付くなんて
今更気付いてしまうなんて
「今更っ・・・遅い────・・・」
理解した感情に、なす術はなく
ソレは涙となって逢いたいと唯々零れ落ちた。
拭う指も止める手もない。
このまま枯れ果ててしまえばいいのに
シュウと最後に交わした言葉はなんだっけ?
〝離れたくない〟と、あの時言えたなら、この気持ちに気付けていたなら・・・何か変わっていたのかな?
気付いた想い人を胸の奥へ奥へとしまい込む
伝えても意味の無い言葉を必死に呑み込む
───好き。
この言葉を私は口にしてはいけない
どうしたって交わる事も、届く事もない想い。
家族でも兄弟でもない私とシュウにもう接点はないのだから・・・
ソレを理解しても涙は止まってくれなかった。
声が聴きたい。
名前を呼んで欲しいなんてワガママは言わないから
毎日聴いてた貴方の声が聴きたい。
この感情の正体をわからないままでいられたなら、良かったのかな。
ねぇシュウ
会いたい
貴方に会いたい。