第5章 Ⅴ
シュウの声を聴くと穏やかな気持ちになったり焦ったり切なくなったり私のココロは、目まぐるしく色付く。
子供扱いしないで欲しいと願いながら、触れてもらえなくなればきっと苦しくて堪らないのだろう。
「ワガママだなぁ。」
自分に言い聞かせるように呟くコトバは何とも白々しくて、この感情の行き場を探した。
・・・けれど正体不明の感情の置き場などある訳がない事に気付く。
霞が掛かったようなアタマとココロが苦しい。
誰にも逢いたくない...
誰とも喋りたくない...
口を開けば思っている事総てが出ていきそうで怖い。
知らなきゃいけない、聞かなきゃいけないのに何も考えたくない
だから私は目を閉じた。
そうすれば何もしなくていいから...。
ベッドが軋む。
シュウ・・・?帰ってきたの?
今一番会ったらダメなのに────
「シュウ...この気持ちは何?」
「会いたいのに会いたくない」
シュウは立ち上がって応えた
『・・・さぁな。』
少し間の空いた答えが気になって身体を起こす
『それよりアンタ、キョウダイでもないんだから早くそこどきなよ。』
「え?どう・・い」
『聞こえなかった?ここはアンタの家じゃないって』
淡々と告げられる言葉に声が震える...それを悟られないように言葉を繋ぐ。
「急に・・・何言ってる・・の?」
だめだ。
目尻から流れ落ちる水滴。
何故シュウの瞳は私を映さないのだろう?
『ここはアンタの家じゃない・・・けど────っ!』
振り向いたシュウは私を包み込んだ。
「───え?」
突然シュウに抱きしめられて
窓ガラスの破片から守ってくれたんだと理解するのが遅くなった。
『なん・・・だ?』
窓から後退り私を護るように背後へ隠す
『迎えにきたよお姫様。』
その声はシンくんで、耳元から聞こえた。
驚き振り返れば、窓はシンくんに割られたのだと解った
言葉に詰る私の顔を見つめ、そっと涙を拭ってくれたシンくん。
そして怒りを露わにしながらシュウを見据えて言った
『ヴァンパイア如きが...許されると思うなよ。』
そのまま片腕で私を抱き寄せた
シンくんが怒ってる私が泣いていたから?
それよりもシュウは、私を兄妹ではないと言った。
『もういいだろ?行けよ。』
────シュウ。
涙が溢れるばかりで声にならない声で何度も名前を呼んだ。