第3章 Ⅲ
「ごめんシンくん。私帰らなきゃ!!」
家を出る時レイジさんに反抗して出てきたんだ
帰りが遅かったら何を言われるか...。
『・・・そう。』
『また明日ね。』
そう言ったシンくんの唇が軽く頬に触れた。
────え?
『ククッ。何固まってんのさ そんなに顔紅くしてると狼に喰われちゃうよ?』
「っ・・・又ねシンくん!」
恥ずかしさで目も合わせられない私に追い討ちを掛けるシンくん。
『あーあ。やっぱり・・可愛いな。』
より色付いた頬を隠しながら教室を飛び出した
可愛い?私が?嬉しい。
・・・けど、シンくんのメガネ伊達なのかな?とも思ってしまう。
取り敢えず真っ赤な顔をどうにかしたくて近くにある水道の蛇口を捻る。
冷たくて気持ちいい...。
何回か顔を洗い目の前の中庭を見ればシュウが居た
あ、謝らなきゃ───。
都合よくこちらに気が付いて歩いて来るシュウ
後数歩。
「シュ────・・・」
私の声は知らないヒトの声に掻き消される
フワリと薫る匂いが何となくシュウを連想させた
又少し心臓が痛い。
幸いカノジョはこちらに背を向け私に気が付いていない
立ち去るなら今だ。邪魔しちゃ悪いもんね...。
こっそりシュウに手を振る
それを見たシュウは私の瞳を見つめたままカノジョの唇を塞いだ
私がシンくんにされたのとは違うキスで...
な・・・んで。
重なったままの視線を逸らす事は簡単なハズなのに出来ない
少し目を細めるシュウは何でこんなにも艶やかなのだろう。
ほんの数秒なのにとても永く感じる
「・・・くない。」
────見たくないのに。
シュウが一瞬驚いたと同時に、女の人が倒れ込んた
゛大丈夫ですか?゛と声を掛けたいのに身体は動かない
『。』
それどころかシュウの声が遠のく
私の心配より、カノジョの心配しなよ...
「シュウ・・・」
自分の感情に頭もカラダも付いていけない。
こんなだから子供扱いされてしまうのかな?
シュウの声だけが何度も響き、そのまま意識は途切れた。