第8章 第四話 date
「ウォーカーさんー、切符買えましたー…。ってあれ?
ウォーカーさん?」
あのウォーカーさんの事だからてっきり追いかけてきてくれてると思ったのに、後ろを振り向いてもどこにもいなかった。
どうしようもなく惨めな気持ちになる。
追いかけてきてくれてるなんて思っちゃって自意識過剰。
私は、その程度の存在なんだ。
マイナスに考えていると目頭がじわり、と熱くなる。
だめだめ。そんな風に考えちゃ。
ウォーカーさんはそんな人じゃない。
探しにいかなきゃ。
私が駅から町に戻ろうと踵を返すと、
「はぁっ…はぁっ…追いかけれなくてごめんなさい…。ちょっと欲しいものがあって…。」
肩で息をしながらウォーカーさんが駅に来てくれた。
急いで来てくれた、と言うだけでさっきの不安がどこかへ消える。
「そ、そうなんですか。いえ、全然大丈夫です!」
「すみません…。行きましょうか。」
と、さっき一度離れてしまった手を再び握ってくれる。
そんな小さなことがすごく嬉しくて、思わず顔がにやける。
二人で列車に乗り、席に座る。
ガタン、ガタンと列車が二人の体を揺らす。
「ウォーカーさん、さっき何買っ…。」
「ニナ」
「はっ、はい!」
急に名前を呼ばれ、とっさに返事をする。
「アレンです。」
「へっ?」
「いつまでウォーカーさん、なんですか?」
ちょっと頬を膨らませてふてくされるウォーカーさん。
いつもは見せない表情にきゅん、としてしまう。